電子定款で必要な本人確認の方法

前回の記事では、オンライン本人確認(eKYC)の仕組みや種類について、全体像を解説しました。今回はその続きとして、電子定款認証において「実際にどの本人確認方法を使うのか」「どのように進めるのか」を、より実務に寄せて詳しく解説します。また、電子定款の作成方式には「自作方式」と「行政書士の作成代理方式」があり、本人確認や電子署名の要否が異なるため、本記事では両者の違いを明確にして説明します。

・オンライン本人確認とは?仕組みと必要書類を分かりやすく解説

目次

前回(オンライン本人確認)との違い

前回:オンライン本人確認(eKYC)という仕組み全体の説明→ 銀行・証券・行政手続きなど幅広い場面で使われる一般的な本人確認の話

今回:電子定款認証で実際に必要な本人確認の方法
→ 公証役場が求める手順・必要書類・注意点など、電子定款に特化した実務の話

前回=概念の説明、今回=電子定款での具体的な手順
という関係です。

電子定款で必要な本人確認は「電子署名」が中心!

電子定款認証では、
自作方式」の場合は発起人全員が電子署名を行うこと
が本人確認の中心になります。

電子署名は、

  • 本人が作成したこと
  • 本人が内容を確認したこと

を証明する役割を持っています。

電子定款で使われる本人確認の方法(3種類)

電子定款の本人確認に用いられる主な方法は次の3種類です。各方式の対応可否は公証役場や使用する署名ツールによって異なりますので、事前確認が重要です。

1.マイナンバーカードによる電子署名(最も一般的)

2.公証役場での本人確認(来所が必要な場合)

3.オンライン本人確認(公証役場が採用している場合)

それぞれ詳しく見ていきます。

【補足】令和8年(2026年)1月13日から、PDFにXML署名を付与した電子定款の提出が可能となるなど、申請方法が拡大されています。たとえば、PDFにXML署名を付与する方式や、委任状等を同一申請で添付できる運用が公証人側で導入されるケースがあります。これらの方式の対応状況は公証役場や使用する署名ツールによって異なるため、最新の運用(XML署名の可否を含む)については、申請前に必ず公証役場へ確認してください。

・法務省:XML署名を付与した電子定款の提供等が可能になりました(令和8年1月13日)

・日本公証人連合会:電子定款認証に係る申請方法の拡大について(2026/01/16)

マイナンバーカードによる電子署名(最も一般的)

電子定款では、発起人全員がマイナンバーカードを使って電子署名を行うのが基本です。署名用電子証明書のパスワードを使って署名します。

必要なもの

  • マイナンバーカード
  • 署名用電子証明書のパスワード
  • ICカードリーダーまたは対応するスマートフォンアプリ

※PCでの署名が一般的かと思います。スマホで署名できる場合もありますが、公証役場や使用する署名方式によって対応状況が異なるため事前確認が必要です。

  • パスワードを忘れている
  • カードリーダーが認識しない
  • 電子署名ソフトの操作が難しい

公証役場での本人確認(来所が必要な場合)

電子署名ができない場合や、公証役場が必要と判断した場合は、発起人が公証役場へ出向いて本人確認を行うことがあります。

持参するもの

  • 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など)
  • 公証役場から指定された書類

オンライン本人確認(公証役場が採用している場合)

一部の公証役場では、ビデオ通話などを使ったオンライン本人確認を採用しています。第5回で紹介したeKYCの一種ですが、電子定款用に運用されています。

注意点

  • 公証役場ごとに対応状況が異なる
  • 事前にメールで確認が必要

電子定款で必要な本人確認書類

電子定款認証では、次の書類を準備しておくとスムーズです。

  • マイナンバーカード
  • 運転免許証(補助書類として)
  • 住民票(必要に応じて)
  • 公証役場から指定される補足資料

電子定款特有の注意点

発起人全員が本人確認を行う

1人でも不備があると認証が進みません。

電子署名のパスワードロック

5回間違えると市役所で再発行が必要になります。

公証役場ごとに運用が違う

メールでの事前確認が必須です。また、スマートフォンでの電子署名については、利用するアプリや公証役場の運用により対応状況が異なります。スマホでの署名を予定している場合は、事前に公証役場へ「スマホアプリでの署名を受け付けるか」「どの署名方式(PDF署名/XML署名等)を受け付けるか」を必ず確認してください。

【参考】行政書士が代理で行う場合の本人確認の流れ

電子定款の手続きはご自身で進めることもできますが、行政書士に依頼する場合は、本人確認の方法や手順が少し異なります。ここでは、代理で行う際の一般的な流れをまとめています。

①発起人の本人確認書類を預かる(データでOK)

行政書士が代理で手続きを行う場合、発起人の本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)をデータで預かり、本人確認を行います。

(注)

行政書士が「作成代理人」として電子署名を行うため、発起人には電子署名環境(マイナンバーカード・ICカードリーダー等)も不要です。そのため、電子定款の作成および認証に関する委任状を必ずいただきます。また、実務上は委任状に加え発起人の印鑑証明書が必要になることが一般的です(公証役場の指示に従ってください)。

②本人確認書類の内容を確認する

預かった本人確認書類の内容(氏名・住所・生年月日など)を定款の記載内容と照合し、相違がないか確認します。

③公証役場への本人確認資料等の提出

代理で手続きを行う場合、行政書士が本人確認資料等をまとめて公証役場へ提出します。公証役場から追加資料を求められた場合も、行政書士が対応します。

④必要に応じて発起人本人の確認を補完

公証役場の判断で、追加の本人確認が必要になる場合があります。その際は、行政書士が連絡を受け、発起人へ案内を行います。

まとめ:電子定款の本人確認は「電子署名」が中心

電子定款認証では、電子署名 → 公証役場での確認 → 認証という流れで本人確認が行われます。以前、紹介したオンライン本人確認の仕組みを踏まえつつ、電子定款に特化した手順を理解しておくとスムーズです。また、実務においては公証役場ごとに運用が異なる場合があるため必ず事前に利用予定の公証役場へメールまたは電話で確認してください。

・オンライン本人確認とは?仕組みと必要書類を分かりやすく解説

最後に

電子署名や本人確認の手続きは、ご自身で進めることもできますが、行政書士が作成代理人となることで電子署名の環境が整っていない場合でも申請が可能となります。また、必要な部分だけサポートを受けることもできますので、無理のない形で進めてみてください。

この記事を書いた人

埼玉県三郷市で、電子定款認証を中心に支援している行政書士です。
「Restart」という名前には、**“未来に一歩踏み出す人を応援したい”**という思いを込めています。
行政書士業務の傍ら、デイトレードにも挑戦中(こちらは修行中...)。
学び続ける姿勢を大切にしながら、依頼者の次の一歩に寄り添います。

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