当事務所は三郷市・吉川市・松伏町・八潮市・越谷市・草加市の5市1町を中心に、主に埼玉県東部(埼葛地域)で建設業許可申請をサポートしております。
日頃、地元の建設事業者の方や職人の方からご相談をお受けする中で、特に多くいただくのが次のようなお悩みです。
「資格を持っていないけれど、建設業許可は取れるのか?」
「一人親方としてやってきた長年の経験は使えるのか?」
「昔の資料しか残っていないけれど、大丈夫だろうか?」
「過去の契約書が見つからない…」
結論から申し上げますと、国家資格等を持っていなくても、実務経験を証明できれば営業所技術者(専任技術者)となり、建設業許可を取得することは十分に可能です。
ただし、「実際に現場で何年間も働いてきた」という事実があるだけでは許可は下りません。
建設業許可の審査においては、行政が求める適切な客観的資料によってその実務経験を証明できるかがすべてとなります。
この記事では、埼玉県で実務経験によって営業所技術者の証明を行うための具体的な手順、必要資料、埼玉県独自の取扱いや注意点などについて解説します。
① 営業所技術者とは?
営業所技術者の概要
営業所技術者とは、建設業許可を受ける営業所に常勤し、その営業所で行われる請負契約の適正な締結や工事の技術的な管理・指示を行う担当者のことです。
建設業法の改正(令和6年12月施行)に伴い、従来「専任技術者(専技)」と呼ばれていた名称が「営業所技術者(等)」に変更されました(※特定建設業許可の特定営業所技術者を含めた総称。本記事では一般建設業許可の営業所技術者を前提に解説します)。
建設業許可との関係
建設業許可を取得・維持するためには、法で定められた5つの許可要件をすべて満たす必要があります。その中でも営業所ごとに営業所技術者を配置することは、経営業務管理責任者(経管)の確保と並ぶ最重要要件の一つです。
営業所技術者が必要な理由
建設工事は、施工の不備が重大な事故や事故物件の発生、近隣への被害につながるリスクをはらんでいます。そのため、各営業所に技術的な専門知識や実務経験を持った責任者(営業所技術者)を常勤で配置させ、請負契約の見積もり・見積書の作成・技術的指導などを適正に行わせることで、工事の品質確保と手抜き工事の防止を担保しているのです。
② 営業所技術者の要件確認で最初に押さえたい鉄則
実務経験での申請を検討する際、真っ先に実務経験の集計に入ってはいけません。
建設業許可の手続実務では、必ず以下の順番で確認を行うことが鉄則となります。
- 資格によるルート(国家資格・技能士等)
- 学歴+実務経験によるルート(指定学科の高校・大学卒等+一定の実務経験)
- 実務経験によるルート(原則10年の実務経験)

実務経験ルートは「最後の選択肢」
実務経験のみで証明するルートは、確認・準備すべき資料の量が膨大であり、過去10年分の客観的裏付けを資料を揃える作業には多大な労力と時間がかかるため、途中で資料の抜け漏れが見つかり、申請がストップするリスクも高くなります。
そのため、まずは「使える資格がないか」「過去に卒業した学校の学科が指定学科に該当しないか」を徹底的に確認し、どうしても該当しない場合の最終手段として「実務経験ルート」を選択するのが鉄則です。
▶関連記事:【まずはここから】営業所技術者になる3つのルート(資格・学歴・実務経験)を解説(リンク)
▶関連記事:建設業許可は「資格」で取るのが近道!営業所技術者の確認ポイントと注意点(リンク)
▶ 関連記事:建設業許可の学歴要件とは?営業所技術者になれる対象学科まとめ(リンク)
③ 登録基幹技能者講習修了者は先に確認しましょう
10年の実務経験証明が最終手段と説明しましたが、最終手段に入る前に必ず確認すべき特例制度が「登録基幹技能者」です。
登録基幹技能者ルートとは
熟練した施工能力と現場管理能力を持つ職長級の技能者を評価する制度で、指定の「登録基幹技能者講習」を修了し、講習修了証の交付を受けている方は、それだけで一般建設業許可の営業所技術者要件を満たすことができます。
実務経験証明より優先して検討すべき理由
通常、資格を持たない方が営業所技術者になるには10年分の工事実績と在職証明の資料が必要です。
しかし、登録基幹技能者講習修了者であれば、それを証明する書類の写しを提出することで、10年分の膨大な契約書や請求書、通帳などの過去資料を集める必要が一切なくなります。
10年以上の現場経験があるベテランの方で、登録基幹技能者の講習を修了されている(または受講要件を満たしている)場合は、10年の実務経験証明を行うよりもはるかに手続きの負担が軽減されます。
④ 実務経験で営業所技術者になるための要件
原則10年
資格も指定学科の学歴もない場合、許可を受けようとする建設業種に関して10年以上(通算120か月以上)の実務経験が必要です。
業種との関係
実務経験は「建設業全般の経験」ではなく、「申請する業種に直接合致する経験」でなければなりません。
例えば、内装仕上工事の許可を取りたい場合は「内装仕上工事」の実務経験が10年必要であり、大工工事やとび・土工工事の経験を足し合わせることは原則としてできません。
例外(実務経験の振替)
なお、土木・建築一式工事から一部の専門工事(専門工事から各一式工事は不可)や、関連性のある専門工事間では、一部実務経験の振替ができるものがあります。この場合、許可を取得する業種について8年超、振替可能な業種と併せて12年以上の経験を満たしていれば要件を満たします。
詳しい振替可能業種については埼玉県の手引きを参照してください。
【一式工事から専門工事への実務経験の振替の例】

とび・土工工事業の営業所技術者になろうとする場合、とび・土工・コンクリート工事実務経験(8年超)と土木一式工事の実務経験(4年)をあわせて12年以上になれば、とび・土工工事業の営業所技術者になる要件を満たします。また、土木一式工事の実務経験が10年(4年+6年)あるので、土木工事業の営業所技術者になる要件も満たします。
【専門工事での実務経験の振替の例】

大工工事業の営業所技術者になろうとする場合、大工工事の実務経験(8年超)と内装仕上工事の実務経験(4年)をあわせて12年以上になれば、大工工事業の営業所技術者になる要件を満たします。また、内装仕上工事の実務経験(8年超)と大工工事の実務経験(4年)をあわせて12年以上となれば、内装仕上工事業の営業所技術者になる要件も満たします。
学歴ルートとの違い
学歴+実務経験ルートとの最大の違いは「学歴による期間短縮の有無」です。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 指定学科を卒業した大学・高等専門学校 | 3年以上 |
| 指定学科を卒業した高等学校・中等教育学校 | 5年以上 |
| 指定学科を卒業した専修学校専門課程(一定要件あり) | 3年以上または5年以上 |
例えば、
「工業高校の建築科を卒業してから5年以上建設業に従事している」
「土木系の大学を卒業してから3年以上の実務経験がある」
という場合は、このルートに該当する可能性があります。
⑤ そもそも実務経験とは?
実務経験の定義
実務経験とは、許可を受けようとする建設工事の施工に関する技術上の経験を指します。単に建設会社に在籍していた期間や、現場にいた期間のことではありません。
実務経験に含まれる職務内容
具体的には、以下のような経験です。
- 現場施工(直接的に工事を施工した経験):職人や作業員として実際の施工に携わった経験
- 技術指導・施工管理:現場監督や主任技術者として、工事の工程管理・品質管理・安全管理を行った経験
- 見習い期間:見習いとして技術習得に励んでいた期間(ただし客観的立証が必要)
実務経験に含まれない職務内容
一方で、以下のようなものは一般的に実務経験には入りません。
- 建設会社の総務、経理、人事、総務などの事務職期間
- 清掃作業、雑務、ガードマン(警備員)としての業務期間
- 単なる資材の運搬、トラックの運転のみを行っていた期間
⑥ 【重要】実務経験証明では何を証明するのか
実務経験の証明で最も重要な根幹概念です。
審査において、実務経験の証明とは何か1つを証明するのではなく、以下の「2つの要素」を証明することを意味します。

このように「実務経験」と「在籍証明」の両方の資料が10年分揃って初めて、実務経験証明が成立します。
⑦ 実務経験はどのように証明するのか
実務経験の証明資料は、証明者が当該業種の建設業許可を受けている場合と証明者が許可を受けていない場合とで異なります。
なお、証明者自身が営業技術者本人である、又は、申請(届出)者と同一である場合は在籍証明は不要です。
証明者が当該業種の建設業許可を受けている場合
実務経験の証明資料
工事実績を確認できる資料は不要(建設業許可通知書等の写しを添付)
在籍証明資料
役員だった場合は履歴事項全部証明書、それ以外は厚生年金被保険者記録照会回答票など
証明者が許可を受けていない場合
実務経験の証明資料
一式工事の場合・・・請負契約書+預金通帳 ※一式工事は請負契約書が必須です。
専門工事の場合・・・契約書、請求書、注文書等で工事内容が明記されたもの+預金通帳
在籍証明資料
役員だった場合は履歴事項全部証明書、それ以外は厚生年金被保険者記録照会回答票など
⑧ 実務経験を証明する際の注意点
実務経験の証明資料は、ただ形式上資料を揃えれば良いというわけではありません。
客観的に実務経験を証明するためには、以下の3点に特に気をつけましょう。
① 工事内容が明確に分かる資料であること
請求書や注文書、契約書に記載されている「工事名」から、申請する業種の工事であることが一目で判断できる必要があります。埼玉県の手引きにも現場名の記載しかないなど、工事内容が明記されていないものは、資料として認められない旨が記載してありますので注意しましょう。
- OK例(工事内容が特定できる)
- 「○○様邸 新築内装クロス張替工事」(内装仕上工事)
- 「○○ビル 外壁塗装塗替工事」(塗装工事)
- 「○○駐車場 舗装打ち換え工事」(舗装工事)
- NG例(工事内容が判別不能)
- 「○○市○○町工事」(業種が不明)
- 「工事代」「作業代一式」「応援代」(具体的な施工内容の記載がない)
- 「○○一式」(何を行ったか記載がないものは、補足資料を求められる場合があります)
② 原則として複数業種でダブルカウントできない
同一の期間内に複数の工事を行っていたとしても、実務経験の期間を二重にカウント(ダブルカウント)することは原則として認められません。
例えば、10年間土木一式工事と建築一式工事の両方に従事していた場合に、同時期の実務経験は土木一式工事の実務経験10年と建築一式工事の実務経験10年として計算することはできません。両方の営業所技術者となるためにはそれぞれ10年間の実務経験が必要となります。
重複が認められる例外
平成28年5月31日までの解体工事ととび・土工・コンクリート工事に係る実務経験については、それまでの解体工事に係る実務経験ととび・土工・コンクリート工事に係る実務経験が重複している場合は、それぞれの建設工事に係る実務経験として計算することができます。これは、平成28年6月1日に改正建設業法が施行されるまで、解体工事は独立した業種ではなく、とび・土工・コンクリート工事業の一部に含まれる工事として扱われていたためです。
なお、この場合はそれぞれの建設工事の実務経験証明書を作成して、それぞれの建設工事に従事したことを証明する必要があります。
③ 取得したい業種に合致している必要がある
当然ですが、内装仕上工事の許可を取りたいのに、過去の防水工事の実績を提出してもカウントされません。現場でリフォーム工事一式として受注している場合でも、その内訳(クロス張替なのか、大工工事なのか、設備工事なのか)を特定し、該当業種の実績として抽出しなければなりません。
⑨ 実務経験の証明資料が揃わない場合の対応
「過去の契約書や注文書が見つからない」「通帳を記帳・保管していない」といった場合は、代替手段を検討する必要があります。なお、代替手段での対応を検討する場合には、必ず事前に埼玉県庁の建設管理課に内容の事前確認を行ってください。
契約書・注文書・請求書がない場合
・過去の取引先(元請)に連絡し、過去の注文書・請書や請求書の控えがないか確認する。
・書類の記載が一部不鮮明な場合、「見積書」「打ち合わせシート」「現場の写真」「仕様書」「工事台帳」などを添付し、具体的な工事内容を補完して立証する。
入金通帳がない場合
通帳を紛失・処分してしまった場合は、取引のある銀行窓口へ行き、過去10年分の「取引履歴明細書」を発行してもらいます。
なお、金融機関によっては、10年以上はさかのぼれない場合や、発行までに一定の時間がかかる、発行に際して数千円~数万円かかることもあるので、事前に対象の金融機関に確認してください。
前職(過去の勤務先)から証明がもらえない場合
前職の会社で働いていた期間を実務経験に含める場合、前職の法人が解散していたり、事情により使用者から証明を得られない場合には、「当時証明者の下で勤務していたことを確認する書類(厚生年金被保険者記録照会回答票など)」を添付して、自己証明とすることができます。
⑩ 埼玉県における工事実績を確認できる資料の件数について
実務経験(10年=120か月等)を立証するために提示する工事実績資料の件数について、埼玉県では確認資料と次の確認資料との間の間隔が3か月未満である場合は、その間の資料の提示を省略することができます。
このように見ると少し難しく感じますが、要は3か月ごとに資料を提示すれば、その間の2か月分の資料は不要と言うことです。
【例1】3か月ごとの1月、4月、7月、10月、12月(ここだけ1か月間隔)分の資料=12か月の証明
【例2】1月、5月、9月、12月分の資料=1月分+5月分+9~12月分=6か月の証明
⑪ 今後建設業許可取得を目指す方へ
「今はまだ資料が足りなくて10年届かない」「数年後に建設業許可を取りたい」と考えている事業者の方は、今日から以下の資料を必ず捨てずに保管・整理しておきましょう。
- 工事関連資料
- 工事請負契約書・注文書・請書(原本)
- 請求書(控え)
- 見積書・納品書・現場の打ち合わせメモ
- 預金通帳
- 在職証明資料等
- 確定申告書控
- 決算書・青色申告決算書
- 社会保険の標準報酬決定通知書、雇用保険の通知書
- 住民税の特別徴収税額通知書
⑫ まとめ
資格を持っていなくても、10年間の実務経験を立証できれば営業所技術者となり、建設業許可を取得することは可能です。
実務経験ルートを攻略するための要点を整理します。
鉄則:まずは「資格」「学歴」ルートが使えないか確認し、実務経験は最終手段とする。
登録基幹技能者:持っている場合は10年の証明作業をスキップできるため最優先で確認。
二大要素:「実務経験」と「在籍証明」の両方が10年分揃って初めて成立する。
立証間隔:実務経験の確認資料は3か月ごと(間2か月)に提示する。
⑬ 実務経験による証明でお困りの方へ
実務経験によるルートは、資格によるルートや学歴+実務経験によるルートと比べると、確認する資料も多く、証明方法の検討に時間がかかることが多いです。
また、実際には今回挙げた資料の他に、営業所技術者の常勤確認資料等も揃える必要があります。
しかし、申請が大変だからと建設業許可の取得を諦めてしまうのはもったいないかもしれません。
長年にわたり現場で培ってきた経験や実績は、建設業許可取得に向けた大切な財産です。
「資格がないから難しい」「資料が残っていないから無理かもしれない」と決めつける前に、今ある資料でどのような証明ができるのかを確認してみることが大切です。
当事務所では、建設業許可の取得というゴールに向けて、これまで積み重ねてきた経験や実績をどのように活かせば許可という形に結び付けることができるのか、一緒に考えながら手続きを進めていますので、ご不安な点がございましたら、お気軽にお問合せ下さい。
お知らせ
Restart行政書士事務所では、公式LINEでお気軽にご相談いただける体制を整えてます!
また、公式LINEでは建設業許可(一般)の取得可能性について簡単チェックも可能です!
もちろん、簡単チェックではなく些細なご相談でも大歓迎です!
皆様との大切なご縁をお待ちしております!
【NEW!】CCUS登録の代行業務を開始しました!
当事務所では、新たに 建設キャリアアップシステム(CCUS)登録の代行業務 を開始しました。
本サービスの特徴は主に3つです!
① 完全オンライン完結で、全国対応!※埼玉県内の事業者様におきましては対面でのやり取りも可能です!
②LINE対応可能なので忙しい現場の合間のスキマ時間で申請可能!
③分かりやすい超明瞭会計なので、アウトソーシングの際にも紹介しやすい!
対応内容の詳細は CCUS登録のご案内ページ をご覧ください。
関連記事のご案内
建設業許可の制度全体像については以下の記事で解説しています。
▶ 建設業許可とは?制度の全体像を分かりやすく解説(リンク)
建設業の業種については以下の記事で解説しています。
▶ 行政書士のための建設業許可・業種区分ガイド ― 29業種を一気に整理する実務ナビ ―(リンク)
「常勤」と「専任」の違いについては以下の記事で解説しています。
▶建設業許可の「常勤」と「専任」の違いを整理し、主な証明書類もまとめました(リンク)
営業所技術者になる3つのルート(資格・学歴・実務経験)については以下の記事で解説しています。
▶埼玉県で建設業許可を取得するには?営業所技術者になる3つのルートを解説(リンク)
資格ルートでの営業所技術者の証明は以下の記事で解説しています。
▶埼玉県で建設業許可を取得するには?営業所技術者になる3つのルートを解説(リンク)
学歴要件での営業所技術者の証明は以下の記事で解説しています。


コメント